高性能産業用遠心圧縮機インペラ設計

遠心圧縮機のインペラ内の流れは、二次流れによって支配され、その結果、インペラ出口の流れに不均一性が生じます。(いわゆる「ジェット・ウェーク流れ」効果)

特に翼弦の40%から後縁までのスパン方向の相対マッハ数の差異(つまり、ハブとシュラウド間の相対マッハ数の差)は、翼負圧面での二次流れの主な原動力です。3次元逆解法設計を用いたTURBOdesign1は、翼負荷分布を指定することにより、インペラのマッハ数分布を直接制御し、二次流れを容易に制御することができます。

インペラを設計するためにTURBOdesign1で指定された翼負荷分布

 

上の図は、TURBOdesign1で指定された翼負荷分布を示しています。以下に、結果として得られる相対マッハ数分布を示します。これは、従来のインペラと比較して、スパン方向のマッハ数の違いが翼負圧面上で大幅に減少していることを示しています。これは、二次流れを制御することに貢献します。

従来のインペラとTURBOdesign1で作成されたインペラの相対マッハ数分布。ハブとシュラウドの相対マッハ数の差異は、翼負圧面での 二次流れの主な原動力です。通常、従来の設計では3次元マッハ数分布を制御することは非常に困難です。

TURBOdesign1によって計算された翼形状は、従来の設計から得られたものとは大幅に異なります。これは翼角度分布を比較することで明確に確認することができます。

従来のインペラの翼角度とTURBOdesign1で作成されたインペラの翼角度

 

従来のインペラおよびTURBOdesign1で設計されたインペラの性能は、同じベーンレスディフューザーリターンチャネルとの組合せで、同じクローズドループ試験設備で測定・評価されました。TURBOdesign1で設計されたインペラは、設計点において5%高い段落効率を示し、設計点から離れた領域でも、大きな効率改善が見られました。

実験計測された揚程特性(左)効率特性(右)

 

以下の比較図は、TURBOdesign1によって設計されたインペラ形状と、最新の従来設計により設計されたインペラ形状に対し、3次元CFDを実行して得られた流れ場を比較しています。青で示されている流線は、シュラウド隅部の負圧面に運動量の少ない流体が密な状態となっていることを明確に示しており、従来設計によるインペラの出口に運動量が少ない領域が発生しています。

この不均一な流れは、ディフューザーの性能に悪影響を及ぼし、大きな混合損失をもたらします。なお、TURBOdesign1によって設計されたインペラは、翼を簡単に製造するためにストレートフィラメント形状としています。

インペラ表面における流線比較(従来設計(左)とTURBOdesign1による逆解法設計(右))

逆解法設計を用いて設計されたインペラは、負圧面での二次流れがほとんどないことを示しています。その結果、インペラ出口での流れ場はより均一になります。この重要な設計目標は、シュラウド側で前負荷に、ハブ側で後負荷になるよう翼荷重分布を設定することで、とても簡単に達成することができました。この最適な設計仕様は、さまざまな寸法、設計条件を持つ他のインペラに適用できるほど一般性があります。TURBOdesign1は、均一な出口流れとなる遠心圧縮機インペラの体系的な設計を可能にします。

遠心および斜流インペラにおける二次流れ抑制の設計基準について

この論文では、二次流れが抑制され均一な出口流れとなる、斜流および遠心圧縮機とポンプの体系的な設計のための、業界初の一連の
設計方針が掲載されています。


さらに詳しく

ニュースレターを定期購読する